しっかりと立つ
合気という技術を発揮するためには、相手よりもしっかりと立てていることが必須の条件です。
なぜなら、相手よりもしっかりと立てていない場合、相手と接触した瞬間に崩されてしまうからです。
接触した瞬間に崩されたら、どんなに優れた合気の技術を持っていても、それを使う余地がありません。
技術以前の問題です。
逆に言えば、相手よりしっかりと立てていれば、合気の技術がなくても接触した瞬間に相手を崩すことが出来るということです。(相手に合気をかけることは出来ませんが、相手の合気はこちらに通用しません。)
では、しっかりと立つとはどういうことでしょうか。
私たちは、物心がつく以前から立っています。
そのため、普通に生活が出来ている人で、自分がしっかりと立てているとか立てていないとか考える人はあまりいないと思います。
日常生活に全く支障はありませんから、何か特別な体験でもしない限り、こんなことを考えることはありません。
私も、氣の力を身につけたくて拳法道場に入門するまでは、自分が立てていないなどとは夢にも思ったことはありませんでした。
私の今の認識では、「しっかりと立つ」とは相手と接触した時、いかに相手に寄りかからないで立てるかどうかだと考えています。
これを読んで、なるほど相手に寄りかからなければ良いのかといって、寄りかからないで相手に接触できる人はおそらく一人もいないと思います。
いや俺は出来るという方もおられるかもしれませんが、私たちは訓練しない限り何かに接触したらそれに寄りかかるようにプログラムされているのです。
特に相手と押し合いをするような場合、必ず相手に寄りかかって押そうとします。
相手もこちらに寄りかかって押してきます。
お互いに寄りかかり、支え合い、ぶつかり合って押し合います。
当然体重が重くて力の強い方が有利になります。
筋力・体力の世界です。
しかし、相手に寄りかからずしっかりと立つことが出来れば、自分より体格も体重も腕力も勝る相手を動かすことが出来ます。
しっかりと立つためには筋力や、体重、体格、年齢、性別はあまり関係ありません。
なかなか難しいことですが、指導を受けて鍛練を重ねれば誰でもしっかりと立てるようになります。
しっかりと立つことの出来る身体は、力みのない身体、遊びのない身体、緩みのない身体、弛(たる)みのない身体、詰まりのない身体、一本になった身体、動かない身体でもあります。
そして当会の目指す身体は、佐川幸義先生の言われる「どんな力も受けつけない身体」、「近づくだけで相手が倒れてしまう身体」です。